2024/4/13     定額減税のポイント  

いよいよ6月に迫った定額減税の実施について確認しましょう。

減税の方法には、定額減税と定率減税の2種類がありますが、今回実施されのは、定額減税のほうで、納税者の納税額から一律に一定額を差引く減税の方法です。定率減税の場合、納税額が多いほど減税額も大きくなりますが、定額減税の場合は減税額が一律なので、広く減税効果が得られるというメリットがあります。

今回の定額減税では、一人当たりの減税額は、所得税3万円、個人住民税1万円となっており、その対象となる人は、納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族です。ここで、同一生計配偶者とは、納税者本人の配偶者でその納税者本人と生計を一にする人のうち合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合、給与収入103万円以下)の人をさします。また、扶養親族とは、納税者本人と生計を一にする親族等のうち合計所得金額が48万円以下の人をさします。

給与所得者の減税は、令和6年6月以降の所得税及び個人住民税の特別徴収から順次控除されます。なお減税の対象となる給与等は、扶養控除等申告書を提出している会社等からの給与に限られます。

公的年金等受給者の減税は、所得税については6月以降に支払われる公的年金等 の源泉徴収税額から順次控除されますが、住民税は10月以降に支払られる公的年金等の特別徴収額から減税額が順次控除されます。また公的年金収入と給与収入がある人は、両方から定額減税の適用を受けることになりますが、この場合は、確定申告で最終的な年間の所得金額と定額減税額との精算を行うことになります。

事業所得者の減税については、原則として確定申告で実施されることになります。ただし、予定納税の対象者については、第1期分の予定納税の際に納税者本人分の減税額3万円が控除されます。第1期分で控除しきれない場合は、第2期分から、さらに控除しきれない場合は確定申告において控除されます。

2024/4/12   ビジネス関連書を読む 第18回 「経営学」 小倉昌男著  日経BP社 

小倉昌男(1924年12月生~2005年6月没)は、ヤマト運輸(1982年に称号変更)を中小企業から売上高1兆円の大手運輸会社に発展させる基盤を作り上げた経営者である。

小倉昌男は1947年東京大学経済学部を卒業後、父康臣が経営する大和運輸に入社。1971年、康臣の後を継いで代表取締役に就任している。その後、オイルショック後に低迷していた業績回復のため「宅急便」の名称で民間初の個人向け小口貨物配送サービスを始め、急成長させている。

小倉は、この本のプロローグの中で、最大の得意先である三越と決別することになったことを、「三越岡田社長のやり方は許せなかったし、パートナーとして一緒に仕事をするのはもはやまっぴらであった」と語っている。この最大の得意先との決別の決断が、宅急便の成長を後押ししたともいえるだろう。

また、宅急便の規制緩和を巡り、ヤマト運輸が、旧運輸省、旧郵政省と対立した際にも、企業のトップとして先頭に立ち官僚と渡り合っている。理不尽な要求には、毅然と立ち向かう姿は、理不尽な要求を押し付けた三越岡田社長への決別宣言と同じで、その経営姿勢は一貫しており、まことに敬服に値する。

この本で、彼はリーダーの条件として十項目を挙げている。①論理的思考を行う②時代の風を読む③戦略的思考を行う④攻めの経営を行う⑤行政に頼らぬ自立の精神⑥政治家に頼らない⑦マスコミとのよい関係⑧明るい性格⑨身銭を切る⑩高い倫理観をもつ。

一読に値する名著といえるだろう。


2024/3/22   定額減税 その2     

定額減税について確認しましょう。

所得税については、令和6年所得税の納税者である居住者で合計所得金額が1,805万円以下(給与所得のみの場合は、給与収入2,000万円以下)の方は、本人30,000円、同一生計配偶者30,000円扶養親族1名につき30,000円が控除されます。その際の控除方法は、 給与所得者については、令和6年6月以降の最初の給与等の源泉徴収税額から順次控除されます。また事業所得者については、令和6年分の所得税の第1期分予定納税額から本人の減額分を控除。同一生計配偶者等の分は確定申告か予定納税の減額申請により控除されます。

住民税については、令和6年度分の住民税の所得割の納税義務者で令和5年の所得金額が1,805万円以下の方は、本人1万円、控除対象配偶者1万円、扶養親族1名につき1万円が控除されます。その際の控除方法は、令和6年6月分は特別徴収されず、令和6年分の住民税所得割額合計から減税額を差し引き、残額を11等分した金額を令和6年7月から令和7年5月までの11ケ月で特別徴収されます。

いくつかの注意事項を確認しましょう。

給与計算担当者の方は、同一生計配偶者等の確認が必要になります。この場合、定額減税における「同一生計配偶者」は、合計所得金額が48万円以下(給与の収入ベースでは103万円以下)の方であり、これを超える収入がある方は対象外となります。また「扶養親族」は「扶養控除申告書」に記載された人で「住民税に関する事項」に記載された16歳未満の扶養親族も含まれます。

2024/3/19  岩波文庫を読む 第17回「エトルリアの壺」 メリメ著  

プロスペル・メリメは(1803年9月生まれ~1870年9月没)フランスの作家、歴史家、考古学者、そして官吏である。

メリメは、パリのブルジョアの家に生まれ、法律を学んだ後、官吏となり、1834年、フランスの歴史記念物の監督官として、多くの歴史的建造物の保護にあたった。また、ナポレオン3世の側近でもあり、上院議員としても活躍している。

メリメは、1829年から30年にかけて天才的短編作家として文壇に登場している。この時代彼は、8編の短編を発表しているが、その後のメリメは決して多くを書いていない。

彼の代表作は「カルメン」であるが、これは、歴史記念監督官として、また歴史家として旅行の余暇に書かれたもである。

彼の創作活動40年間のうち、短編はわずかに19編しかなく、うち8編は27,28歳の時の作品である。また、晩年には、ロシア文学の研究にふけり、プーシキンやゴーゴリを初めてフランスに紹介している。

この短編集は、彼の創作意欲の旺盛だった時期に書かれたというばかりでなく、後の作品に少しも劣らね完成した作品となっている。、

それにしても、この短編集「エトルリヤの壺」が初めて岩波文庫にでたのは、昭和3年の夏でる。それから、90年以上、現代に読み継がれていることに驚くばかりである。しかもその文章は、古臭くなく訳者をして、「水を飲むごとき快感を与える」と言わしめている。一読に値する短編集であろう。

2024/2/3  ビジネス関連書を読む 第17回「お金の日本史」 井沢元彦著  

井沢元彦は、1954年(昭和29年)名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSへ入社。報道局記者時代に「猿丸幻視行」で第26回江戸川乱歩賞を受賞している。以後作家に専念し現在に至っている。

小説家としては、推理小説、ことに歴史上の謎を題材に取りつつ殺人をからめた作風で多くの作品を発表している。

特に、1992年から「週刊ポスト」に連載されている「逆説の日本史」では、日本の歴史を創ったのは「言霊、和、怨霊、穢れ」への無意識の信仰に基ずく非論理的な日本人の行動であると分析し、資料絶対主義を排し「その書かれなかった背景を考察すべきこと」「時代で常識とされたことは記録されなかったこと」及び通史的考察の重要性を強調している。

この「お金の日本史」でも井沢の考え方が色濃く反映され、史実にはでてこない大胆な考え方を繰り広げている。読み物としては、大変面白く、事実としての歴史書というよりも小説としての歴史書として読むべきなのかもしれない。

この本において井沢は、単なる貨幣の歴史を述べるだけではなく、その背後にある政治思想を大胆に仮説する。

たとえば、日本最初の貨幣「和同開珎」は、脱中国をめざす日本の独立宣言的な貨幣だったと解釈したり、徳川家康は、実は開国論者だったとか、渋沢栄一を絶賛し、本来は、経済発展の障害となるはずの儒教を経済発展の基礎に据えるという奇跡を成し遂げた、と語っている。

ただし、彼に対する批判も多く、歴史家の呉座勇一氏は「井沢氏の主張には、問題が多い。学会ではすでに過去のものとなっている俗説の焼き直しか作家的創造力が旺盛すぎて学問的な批判に耐えない奇説が大半である」と批判している。

2024/2/1    定額減税について   

令和5年12月22日、令和6年度税制改正の大綱が閣議決定されました。その大綱において、令和6年分の所得税について定額減税による所得税の特別控除を実施することとされており、今後関係する税制改正法案が成立した場合、令和6年6月から定額減税が実施されることになりす。

所得税額の特別控除を受けることができる方は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方、(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下である方)です。

特別控除額は、次の金額の合計額です。①本人(居住者に限る)30,000円、②同一生計配偶者または扶養親族一人につき30,000円。

実施方法は以下の通りです。

給与所得者の場合は、令和6年6月1日以降、最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし「給与所得者の扶養控除等申告書を提出している勤務先から支払われる給与等に限る、)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興所得税の額から順次控除されます。

公的年金受給者の場合は6月1日以後、最初に支払われる公的年金等につき源泉徴収をされるべき所得税額の額から特別控除に相当する金額が控除されます。

事業所得者の場合は、原則として令和6年分の所得税の確定申告の際に、所得税の額から特別控除の額が控除されます。また、予定納税の対象となっている方は、令和6年7月の第一期分予定納税額から本人分に係る特別控除の額が控除されます。

2024/1/6   スタートした改正電子帳簿保存法 

本年1月より、改正電子帳簿保存法がスタートした。

電子帳簿保存法(以下電帳法))とは、帳簿や書類などを、決められたルールに従って、電子データで保存することを規定した法律である。この電帳法は、2022年1月に施行されたのだが、多くの企業で準備が整わないなどの理由で2年間の猶予期間が設けられていたのである。

この電帳法で重要なのは、電子メールやクラウドサービスなどを経由してやりとりした「電子取引データ」は、従来のように紙での保存だけでは認められなくなり、電子データでの保存を義務づけられたことである。

たとえば、アマゾンなどのECサイドで購入した際の領収書をはじめ電子メールに添付された請求書などがその対象となる。ここでの注意点は、あくまで原本を保存しなければならないことで、取引後のデータに変更を加えることは禁止されている。

では、この電子データは、どこに保存すればよいのだろうか。実は、その保管場所については、特にルールが決まっているわけではない。要するに、税務調査の際、必要な電子データをすぐ提示できるようにしておくことを求めているのである。

それができれば、その保存場所はデスクトップ、クラウドサービス、ハードディスク、USBメモリーなど、どこに保存しても問題ないことになる。また、トラブルに備えて、バックアップを取っておくことも必要だろう。

保存期間については、インボイスでは、7年間の保存義務があるが、この電子データも7年間の保存義務が課せられている。また、23年度の税制改正において、一部制度の改正が行われ、前々期の売上が5000万円以下の場合、保存の際の電子データの検索要件が不要となっている。

インボイスのみならず、電帳法についての運用についても確認しておきたい。

2024/1/5  岩波文庫を読む 第16回「ビゴー 日本素描集」  G.F.bigot著

G.F.ビゴーは、1860年(万延元年)パリで生まれている。明治11年、ビゴーが18歳の時、パリ万国博覧会の日本館展示で数々の日本美術品を見て日本へのあこがれを持つようになった。そして、明治15年、ビゴーが21歳の時、待望の来日を果たしている。浮世絵の世界に憧れ、日本美術の神髄をじかに学びたいと決意してやってきたのである。

ビゴーは、明治32年39歳の時、帰国の途についている。18年もの間、日本に滞在し、数々のスケッチを残したのである。

官吏や軍人などのエリートたち、洋装と和装がごっちゃになった商人たち、そして近代化や文明開化とは縁のない芸者や女中たち。ビゴーは、フランス社会では、想像もしなかった街並みや、人間たちに大いに興味をそそられたようである。西洋文明が怒涛のごとく入り込んできた日本において、人々は、巧みにそれを吸収しながらたくましく生きていく、そんな民衆に愛着を持ち、18年もの間スケッチを描き続けたのである。

本書「日本素描集」は、彼の代表的作品である「日本人生活のユーモア」全5冊のなかの傑作を選び紹介している。一つ一つのスケッチが、表情豊かで、その時代を語っている。

昭和2年10月、ビゴーは、パリ郊外の自宅の日本庭園で心臓発作を起こし世を去っている。