今回の衆議院選挙で国民民主党が要求している103万円の壁の大幅引き上げについて、学生アルバイト甲さんの立場から、具体的数字で考えてみましょう。
パート、アルバイトの場合、年収103万円を超えると所得税の対象になります。例えば大学生アルバイトの甲さんの年収が113万円の場合、103万円を上回る10万円が課税対対象になり、所得税が5,000円(10万円×5%)かかります。また、100万円を超えるとかかる住民税は1万円(10万円×10%)の負担増になります。
一方、甲さんの世帯主も16歳以上の子供などを対象にした扶養控除を受けられなくなります。
特に甲さんの父親の場合、甲さんが大学生のアルバイトのため、19歳から22歳までを対象にした特定扶養控除(所得税63万円、住民税45万円)が受けられなくなるのです。父親の所得税率が10%だとすると所得税63,000円、住民税45,000円が負担増となってしまうわけです。
またこの103万円の壁のため、飲食業などでは、年末の忙しい時期に労働時間を調節しなければならないという雇用主側のマイナス面も指摘されています。
国民民主党は、基礎控除を現在の48万円から75万に引き上げるように要求しています。同党は、1995年以降の30年間に最低賃金が1.73倍になったのを根拠に、103万円の壁を178万円に引き上げるのが妥当だと主張しているのです。
一方、政府自民党は、8兆円近い減収になると強い難色を示しています。
その決着は、本年12月半ばでの、2025年度税制改正大綱で取りまとめられることになっています。
ジェームス・W・ヤング(1886年~1973年)は、アメリカ最大の広告代理店トンプソン社の常任顧問、アメリカ広告代理業協会の会長などを歴任した人物である。
この「アイデアのつくり方」は、1940年に出版され、現在も売れ続けている発想法関連書籍のベストセラーである。
一般的な感覚として、アイデアとは、「ひらめき」というイメージが強いが、ヤングは、アイデア作成の基礎となる一般的原理についてこう述べている。
第一の原理は、アイデアは、既存の組み合わせ以外の何ものでもないということ。第二の原理は、既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性を見つけ出す才能に依存することが大きいということ。それでは、アイデアを得る具体的手順はどうすればよいのだろうか。ヤングはそれについてもその五つの手順を具体的に述べる。
①最初は資料集めである。当面の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料集めである。
②これらの資料を十分に咀嚼し吟味する。
③問題を無意識の心に移し、眠っている間に勝手に働くにまかせる、思考の孵化状態を作る。
④上記の過程を通して様々なアイデアが生まれてくるだろう。
⑤そのアイデアを現実の有用性に合致させるために、具体化し、展開させる。
80年前に出版された古い書物ではあるが、このアイデア創出方法は、現在においても適用されるだろう。
年齢の高い人同士の遺産相続が増加してるという記事が2024年10月24日付けの日経新聞に記載されている。
2024年度の経済財政白書によれば、遺産を相続する人のうち、60歳以上以上の割合は52.1%、現役世代である50歳代は27,0%、49歳以下は20,6%となっている。
被相続人(亡くなった方)は、80歳以上が全体の7割と30年前と比べると1.8倍に増加している。想定以上の長寿に備え貯蓄したり、将来の経済見通しが不透明なため支出を控えたりと遺産を残すケースが増えてきているのだ。
支出額でみると、高齢世帯の支出額は現役世帯の支出額より少ない。2023年度の総務省家計調査によると70歳以上の2人以上世帯の家計支出は月24万9177円であった。全世帯平均では29万3997円なので約4万円少ないことになる。
貯蓄残高でいえば高齢者の貯蓄は増加傾向だ。2023年の貯蓄残高を世代別でみると70歳以上は前年対比3.8%増の2,503万円となっている。全世帯平均が0.2%増の1,904万円であったので、高齢者の上昇率が高いことになる。一方の若年層は、持ち家率の高まりもあって負債超過になっている。2023年、40歳未満世帯の貯蓄は、平均782万円とほかの世代と比べて少なく、負債額は、貯蓄の2.2倍の1,757万円である。
日銀の資金循環統計によると、家計部門は金融分野だけで2,200兆円を超す資産を持っている。今後も高齢化が進み老老相続が増えるのは確実だろう。家計のお金が高齢層に滞留し、経済全体に有効に使われていない事態になっているのだ。
高齢世代に滞留する資産をいかに経済成長に有効活用するか、税制的にはいくつかの対策は講じられているが、抜本的な制度改革が必要ではないだろうか。
日本を代表する経済人として新一万円札の顔になった渋沢栄一の自伝である。
渋沢栄一は、1840年(天保11年)武蔵国洗島村(現在の埼玉県深谷市)に生まれている。(昭和6年91歳で没)
渋沢は、江戸時代末期に百姓(豪農身分)から武士(一橋家家臣)に取り立てられ、のちに徳川慶喜の将軍就任に伴い幕臣となり、その後、明治政府に取り立てられ官吏となっている。明治政府では、民部省を経て直属の上司井上馨の下で造幣、戸籍、出納など様々な政策立案を行い、初代紙幣頭(後の印刷局長)、ついで大蔵省三等官の大蔵少輔事務取扱となっている。
大蔵省退官後は、実業界に転じ、第一国立銀行(現みずほ銀行)や東京商法会議所(現東京商工会議所)、東京証券取引所といった多種多様な会社や経済団体の設立、経営に携わった。澁沢が関わった企業は500社以上になるといわれている。
また商法講習所(現一橋大学)大倉商業学校(現東京経済大学)高千穂高等商業学校(現高千穂大学)台湾協会学校(現拓殖大学)などの大学の設立に携わり、二松學舎(現二松学舎大学)の第3代舎長就任による私学運営や聖路加国際病院等の医療事業や理化学研究所設立等の研究事業支援、国際交流、民間外交などの実践にも尽力している。
渋沢はその自伝の中で「概括的に論ずれば世運が経済界をしてかくの如く発達せしめたという一言を以って尽くし得らるると思います。そして個人はわずかにその間に一部分の働を為したに過ぎぬのであります。」と述べている。
時代が求めた傑出した経済人であったと言えるのではないだろうか。
相続を取り巻く状況を確認しよう。
死亡者数は、今後20年以上にわたり、出生数の倍の140万人から170万人になると予想されている。また65歳以上の単身高齢者数は、2050年には1千万人を超え2020年時点の約1,5倍となり、かつ男性では、その6割が、女性ではその3割が未婚になると予想されている。つまり、高齢化社会においては、生涯独身で晩年もみよりのない、いわゆる「おひとりさま」も増えることが推察されているのだ。
また遺産分割の調停も増加傾向にあり、遺産分割調停の8割が遺産総額が5千万円以下など、比較的財産額が覆多くない者同士での争いが増えている。(調停件数2000年では10,910件2020年では14,617件と1.3倍に増加している)
これらの状況を踏まえ、これまで以上に遺言書作成が必要になるのではないだろうか。
遺言書の作成により、法定相続分によらず、配偶者、長男、長女などの特定の相続人に多めに遺産を取得させることが可能になる。また内縁の妻、孫、友人、お世話になった人など法定相続人また法定相続人以外の者に対しても、遺言書により遺産を取得させることができる。
また、公益法人、慈善団体などに寄付したい場合や、生涯独身で身寄りのない「おひとりさま」などは、遺言書により公益法人などに財産を遺贈することができることになる。
つまり、遺言書の作成により、相続分の指定、遺産分割方法のの指定、遺贈、寄付などが可能となるわけだ。
このように、遺言書は、生前の相続対策としてきわめて有効であり、また重要であると思われる。
人を動かすものは何だろうか。果たして、人間は、常に合理的な判断をし行動をするものだろうか。それに対して数々の例を通して、人間が「誰かに」あるいは「何かに」誘導されていることを明らかにしているのが本書である。
例えば、喫煙はどうだろう。健康に悪いことは、十分に理解はしているが、しかし健康に悪いという論理だけで喫煙をやめるのは難しい。
また、この本によって、人間の行動が様々な場面で自然に誘導されていることを理解することができるだろう。
1990年代初頭、ランダ、スキポール空港の男子トイレの中、小便器の的として、小さなハエが描かれたそうだ。それによって、自然と狙いが定めやすくなり、床に尿がこぼれる量が5割も減少したらしい。
つまり、小便器に小さなハエを描いただけで人を動かしたことになる。このように、一見すると小さなことが、人の行動に大きな影響を及ぼすことを「ハウスフライ効果(ハウスフライはイエバエのことである)」と呼んでいる。
この本を読むと、私達の日常のなかには、私達の行動を誘導しようとする様々な仕掛けがあることがわかる。
また、人は、「事実」よりも「物語」で動くことや、事前にお金を受け取ったほうが、良い結果が出せることなど。さまざまケースを通じて人間の行動を理解することができる。
まことに興味深い1冊である。
すっかり定着した観のある「ふるさと納税」ですが、もう一度その制度について確認してみましょう。
「ふるさと納税」とは都道府県や市町村といった自治体に対し寄付する制度を言います。ただし寄付する自治体に特に制限はありません。従って、実際の寄付先の選定については、肉や果物など返礼品の内容で寄付先を選定しているのが現実でしょう。
この「ふるさと納税」は、少額の負担で返礼品を受け取れるメリットと節税策としても広く使われています。
例えば年収500万円の共稼ぎ家庭の人が52000円を寄付した場合、所得税と住民税から約50000円の軽減措置が受けられ、実質的な自己負担は2000円だけということになります。つまり、52000円の寄付で、約50000円の税負担が軽減されるのに加え、寄付額の3割程度の返礼品も受け取れるというわけです。
控除上限額は、年収に応じて決まります。年収500万円でしたら5万円前後、年収1000万円でしたら15万円前後が目安となるでしょう。現在はネットの各サイトで所得に応じた控除上限額が計算できるので確認するとよいでしょう。
税法上、返礼品は、一時所得に該当しますが、一時所得には、50万円の特別控除がありますので、返礼品以外の一時所得がなければ、返礼品の合計の時価が50万円以下であれば課税はされません。
せっかく作られた制度ですので有効に活用しましょう。
内村鑑三は、1861年(万延2年)3月23日、江戸小石川の武士長屋に生まれている。(昭和5年3月28日没)日本のキリスト教思想家、聖書学者である。
明治9年、札幌農学校(現北海道大学)にへ入学している。内村ら第二期生が入学する前に、札幌農学校の教頭として、クラーク博士が在籍していた。
この「後世への最大遺物」は、日清戦争の開戦直前、1844年(明治27年夏)箱根で開催されたキリスト教青年会(YMCA〉第六回夏季学校で行われた講演である。
ある資産家は、お金を残すかもしれない。それによってさまざまな慈善事業に寄付することができるだろう。また、ある土木事業家は、その技術によって様々な建築物を残すかもしれない。また、ある才能豊かな文章家は文学としてその作品を残せるだろう。またある思想家は、その偉大な思想を残すことができるだろう。では、資産家でもなく、事業家でもない、また本も書けず、思想も持ち合わせていないならば、その人は、この世に何も残すことなく、ただ消え去るのみなのだろうか。
内村は言う「それならば最大遺物とは何であるか。…人間が後世に遺すことができる、そして、誰でも残すことのできる遺物で、利益ばかりあって害のない遺物。それは、勇ましい高尚なる生涯であると思う。これが本当の遺物ではないかと思う。」
平凡で、秀でた才能がなかったとしても「自分自身の生き方」は遺すことが出来る。それが、後世への最大遺物であると、内村は説く。
現在も読み継がれている名著である。
贈与税には特例制度がいくつか存在しますが、「住宅取得資金の贈与」「教育資金の贈与」「結婚・子育て資金の贈与」について確認しましょう。
①直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
この特例は、直系尊属(父、母、祖父母など)から住宅取得資金の贈与を受けた者が、贈与を受けた年の翌年3月15日までに一定の家屋の新築や取得または一定の増改築等にその資金全額を充て、その家屋を同日までに自己の居住の用に供した時には、贈与税が非課税となる制度です。居住者の要件としては、18歳以上であること、合計所得金額が2000万円以下であることです。その非課税金額は、省エネ等住宅の場合1000万円、それ以外は500万円となっています。
②教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税
この特例は30歳未満の者が、直系尊属(親、祖父母など)から金融機関との一定の契約に基づき教育資金に充てるため贈与を受けた場合、金融機関等の営業所を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより1500万円までの金額に相当する部分の価格については、贈与税は非課税とされるものです。
③結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税
この特例は、受贈者(18歳以上50歳未満の者に限る)が直系尊属(親や祖父母等)である贈与者から結婚・出産・育児の支払いに充てるための金銭を一定の方法により贈与された場合、受贈者一人につき1000万円までの金額が非課税となるものです。ただし子・孫らが50歳に達した場合、使い残しの金額には贈与税が加算され、相続発生時にも残額は相続財産に加算されます。
ダン・アリエリーは1967年生まれのイスラエル系アメリカ人。現在、デューク大学の心理学及び行動経済学の教授を務めている。
この「予想どおりに不合理」は「不合理だからすべてがうまくいく」の著作とともに、アメリカでベストセラーとなった本である。
この本の理論的支柱となっている行動経済学は、伝統的な経済学とどう違うのだろうか。伝統的な経済学では、人々は非常に合理的で、完全な情報と計算能力を持っていて、常に自分の満足度を最大にするように行動していると考えられてきた。(このようなな人間像は、ホモエコノミカスと呼ばれている。)ところが、現実の人間は、情報を十分に活用しなかったり、冷静なな計算がができなかったりと合理的ではなく、直観的な意思決定をすることが多いのである。行動経済学とは、こうした現実の人間の行動特性を前提にした経済学である。
著者は言う「わたしの考えでは、私達は不合理だけでなく、「予想どおり不合理」だ。つまり不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。消費者であれ、実業家であれ、政策立案者であれ、私達がいかに予想どおりに不合理かを知ることは、より良い決断をしたり生活を改善するための出発点となる。」
行動経済学の魅力は、これを学ぶことで私達の日々の生活を改善でき、また仕事にも応用できる点ではないだろうか。
また、この本は読み物としても大変面白い。ユーモアに満ちた文章に大笑いしながら、不合理な人間の行動特性を理解できるだろう。
本年6月より定額減税が実施されていますが、処理上のいくつかのケースを再確認しましょう。
①減税を行ったあとに扶養等の数に変更があった場合。
月次減税額は、令和6年6月1日以降最初の月次減税を行う時までに提出された扶養控除等申告書や源泉徴収に係る申告書の記載内容に基づき計算されますが、令和6年6月1日以降の最初の給与の支払い後に、扶養者等に変更が生じた場合でも減税額は変更せず、その差額は年末調整または確定申告で精算されることになります。(国税庁Q&A6-12)
②源泉徴収税額表の乙欄が適用されている者の定額減税。
月次減税の適用が受けられる給与所得者は、給与等の源泉徴収において源泉徴収税額表の甲欄が適用される居住者です。従って、従業員のうち源泉徴収税額表の乙欄や丙欄適用者は月次減税の対象とはならないことになります。(国税庁Q&A2-1)
③給与収入が2,000万円を超える者などの定額減税。
年間の給与収入が2,000万円を超えることが見込まれる場合であっても、基準日在職者に該当する場合は、月次減額の対象となります。(国税庁Q&A3-4)
④令和6年6月2日以降に入社した場合の定額減税。
令和6年6月2日以降に入社した者については、月次減税の対象となる「基準日在職者」には該当しないことになり、そのため月次減税を受けることはできないことから、通常は年末調整において定額減税の控除を受けることになります。(国税庁ℚ&A3-3)
アーネスト・サトウ(1843年~1929年)は、ヨーロッパの優れた日本学者として、また20世紀初頭のイギリス極東政策の指導的外交官として有名である。サトウは、幕末から明治維新にかけての革命期の日本に長らく滞在し、日本の運命を左右した多くの事件に直接関与している。
この時代は、イギリスの政策なり動向なりが日本の歴史に大きく影響したわけだが、本書は、その体験談を詳細に記録した書物である。
当時のイギリス公使オールコックは、外国貿易が必然的に日本に社会革命を起こすであろうことは十分に予見していた。また同氏ばかりでなく、日本で真の開国が可能なためには、封建制度が打破されて、新しい政治体制が生まれなければならないことは、欧米資本主義国家の外交代表者の一致した見解でもあった。
幕末における一連の日本国内の動きから、日本の封建制度は、外国人が洞察した以上に崩壊する条件が備えられていたとも言えるだろう。
本書の中から、サトウが感じた当時の世相なりを拾いだしてみよう。
「とにかく大名なる者は、取るに足らない存在であった。彼らには、近代型の立憲君主ほどの権力さえもなく、教育の仕方が誤っていたために、知能程度は常に水準をはるかに下回っていた。このような奇妙な政治体制がとにかく続いたのは、ひとえに日本が諸外国から孤立していたためである。」
「江戸は極東の最も立派な都市の一つであったから、それが衰微するというのは悲しいことだった。江戸には立派な公共建築物こそないが、町は海岸に臨み、それに沿って諸大名の遊園地がいくつもあった。城は素晴らしく大きな濠をめぐらして、巨大な石を積み重ねた堂々たる城壁を備え、偉大という印象を与えていた。」
来日していた外国人が当時の日本をどう捉え、またどう影響を与えていたかが解る興味深い書物である。
給与所得者の定額減税における月次の減税処理ついて確認しておこう。
定額減税に係る月次の減税処理については、令和6年6月1日以降最初に支払う給与等に係る税額から控除されることとされており、ここでいう給与等には、賞与も含まれます。
減税額は、本人30,000円、同一配偶者又は扶養親族1名につき30,000円となっており、6月の給与から控除されます。6月の給与から全額控除できなかった場合は、7月、8月(または賞与)から順次控除されるこになります。また、ここでいう同一生計配偶者とは、納税者と生計を一にする配偶者で、その年の合計所得金額が48万円以下の人をいいます。なお、配偶者が青色事業専従者で給与の支払いを受けている場合や白色申告者の事業専従者である場合には同一生計配偶者には該当しません。また月次の減額が行われた後に同一生計配偶者等の数に移動が生じた場合は、年末調整または、確定申告で精算されることになります。
定額減税の適用を受けられるのは扶養控除申告書を提出した甲欄に該当する者であり、扶養控除申告書が提出されていない乙欄、および丙欄適用者については、定額減税は行われないことになります。
また、給与取得者のなかで、合計所得金額が1,805万円を超えることが確実であったとしても、月次の減額処理は行われることとなり、その精算は、確定申告等で行うことになります。
今回の減税は、扶養控除申告書に記載されていない16歳未満の子供も対象となるため、扶養控除申告書のB欄または住民税に関する事項の16歳未満の扶養親族欄に扶養親族の記載をするか、記載がない場合は「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を提出する必要があります。
森永卓郎(昭和32年~)は、経済アナリスト、エコノミストでありタレントでもある。
従来より森永は、日本銀行の量的緩和政策と政府による減税及び社会投資の前倒しによる景気回復を主張している。また、小泉純一郎が首相であった第二次小泉内閣以降の小泉、竹中路線のメイン政策であった聖域なき構造改革には反対の立場で、新自由主義は構造改革の名を借りた弱者切り捨てである、と強く批判していた。また安倍元総理による「アベノミクス」は、この政策により恩恵をけるのは、大企業と資産家だけとなるだろう、と述べていた。
この「ザイム真理教」は、これまでの彼の主張の繰り返しではあるが、そのなかで、「財政均衡主義」は、長期的には間違っている。実は、財政の穴埋めのために発行した国債を日銀が買ったときには、その時点で事実上政府の借金は消えるのだ。」と論じている。
また、安倍政権の最終年にあたる2020年の1年間で日銀は46兆円も国債保有を増やしたが、インフレどころかデフレが続いているのである。森永は、消費税率を5%に引き下げても財政負担は14兆円に過ぎないから、この税収不足分を国債発行でまかない、それを永遠に続けても全く問題はないと主張する。なぜ財務省が国債増発を渋るのか、それは、旧大蔵省時代も含め財務省が40年間こだわっている(布教的ともいえる)「財政均衡主義」せいではないかと主張する。
また、1995年には、世界の18%を占めていた日本のGDPが、いまや6%を切っている。先進主要国のなかで最高に近かった日本の賃金は、、今や最下位となっている。一人当たりGDPで見ると、日本は、すでに香港よりも2割も低く、韓国にも抜かれているのである。この原因は、財務省の掲げる財政緊縮路線の結果であると断じている。
30年間、日本が成長しなかったのは事実であるが、その一因として、財務省があまりに「財政均衡主義」にこだわってきたことも一因かもしれない、と感じさせる一冊である。
インボイス制度も半年が過ぎ、その経理処理についても慣れてきたと思われます。
ここで、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるケースについて確認しておきましょう。
インボイス制度では、帳簿及び請求書の保存が仕入税額控除の要件とされていますが、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由がある場合、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められています。そのなかでよくある事項について確認しておきましょう。
①公共交通機関による旅客の運送……3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、インボイスの交付義務が免除されており、仕入れ処理は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められています。3万円を超える場合であっても、公共交通機関である鉄道事業者から乗車券の交付を受け、その乗車券が回収される場合には、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
②出張旅費、宿泊費、日当等……事業者が、社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち「その旅行に通常必要である部分」の金額については、課税仕入れにかかる支払対価の額に該当するものとして取り扱われ、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められています。具体的にはJR等の電車賃、宿泊費、日当のほか、その旅行に必要であれば、駐車場代、ガソリン代なども認められます。
ショウペンハウエルは、ドイツの哲学者。(1788年2月22日~1860年9月21日)主要著書として、「意志と表象としての世界」がある。
ショウペンハウエルは、芸術論、自殺論で有名であるが、むしろ博学で、法律学から自然学まであらゆるジャンルを網羅した総合哲学者としての印象が強い。また、仏教精神そのものと言える思想と、インド哲学の神髄を明晰に語りつくした思想家でもあった。日本でも、森鴎外、堀辰雄など多くの作家に影響を与えている。
この「読書について」は、1851年の彼の著書「余禄と補遺」という作品のなかに収められている。この本の主題は、いかなるものを読むべきか、またいかにものを書くべきかという観点から書かれたものであり、万人が関心を持つテーマであるため、文章も哲学的なものではなく、大変読みやすい文章となっている。
彼の考えを「読書について」から拾ってみよう。
「読書に際しての心がけとしては、読まずにすます技術が非常に重要でる。その技術とは、多数の読者がその都度、むさぼり読むものに、我遅れじとばかりに手をださないことである。…あらゆる時代、あらゆる民族の生んだ天才の作品だけを熟読すべきである。…良書を読むための条件は、悪書を読まないことである。人生は短く、時間と力には限りがあるからである。」
「重要な書物は、いかなるものでも二度読むべきである。それというのも、二度目になると、その事柄のつながりが良く理解されるし、すでに結論を知っているので、重要な発端の部分も正しく理解されるからである。」
19世紀の作品とは言え、現代にも通用するアドバイスであろう。
いよいよ6月に迫った定額減税の実施について確認しましょう。
減税の方法には、定額減税と定率減税の2種類がありますが、今回実施されのは、定額減税のほうで、納税者の納税額から一律に一定額を差引く減税の方法です。定率減税の場合、納税額が多いほど減税額も大きくなりますが、定額減税の場合は減税額が一律なので、広く減税効果が得られるというメリットがあります。
今回の定額減税では、一人当たりの減税額は、所得税3万円、個人住民税1万円となっており、その対象となる人は、納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族です。ここで、同一生計配偶者とは、納税者本人の配偶者でその納税者本人と生計を一にする人のうち合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合、給与収入103万円以下)の人をさします。また、扶養親族とは、納税者本人と生計を一にする親族等のうち合計所得金額が48万円以下の人をさします。
給与所得者の減税は、令和6年6月以降の所得税及び個人住民税の特別徴収から順次控除されます。なお減税の対象となる給与等は、扶養控除等申告書を提出している会社等からの給与に限られます。
公的年金等受給者の減税は、所得税については6月以降に支払われる公的年金等 の源泉徴収税額から順次控除されますが、住民税は10月以降に支払られる公的年金等の特別徴収額から減税額が順次控除されます。また公的年金収入と給与収入がある人は、両方から定額減税の適用を受けることになりますが、この場合は、確定申告で最終的な年間の所得金額と定額減税額との精算を行うことになります。
事業所得者の減税については、原則として確定申告で実施されることになります。ただし、予定納税の対象者については、第1期分の予定納税の際に納税者本人分の減税額3万円が控除されます。第1期分で控除しきれない場合は、第2期分から、さらに控除しきれない場合は確定申告において控除されます。
小倉昌男(1924年12月生~2005年6月没)は、ヤマト運輸(1982年に称号変更)を中小企業から売上高1兆円の大手運輸会社に発展させる基盤を作り上げた経営者である。
小倉昌男は1947年東京大学経済学部を卒業後、父康臣が経営する大和運輸に入社。1971年、康臣の後を継いで代表取締役に就任している。その後、オイルショック後に低迷していた業績回復のため「宅急便」の名称で民間初の個人向け小口貨物配送サービスを始め、急成長させている。
小倉は、この本のプロローグの中で、最大の得意先である三越と決別することになったことを、「三越岡田社長のやり方は許せなかったし、パートナーとして一緒に仕事をするのはもはやまっぴらであった」と語っている。この最大の得意先との決別の決断が、宅急便の成長を後押ししたともいえるだろう。
また、宅急便の規制緩和を巡り、ヤマト運輸が、旧運輸省、旧郵政省と対立した際にも、企業のトップとして先頭に立ち官僚と渡り合っている。理不尽な要求には、毅然と立ち向かう姿は、理不尽な要求を押し付けた三越岡田社長への決別宣言と同じで、その経営姿勢は一貫しており、まことに敬服に値する。
この本で、彼はリーダーの条件として十項目を挙げている。①論理的思考を行う②時代の風を読む③戦略的思考を行う④攻めの経営を行う⑤行政に頼らぬ自立の精神⑥政治家に頼らない⑦マスコミとのよい関係⑧明るい性格⑨身銭を切る⑩高い倫理観をもつ。
一読に値する名著といえるだろう。
定額減税について確認しましょう。
所得税については、令和6年所得税の納税者である居住者で合計所得金額が1,805万円以下(給与所得のみの場合は、給与収入2,000万円以下)の方は、本人30,000円、同一生計配偶者30,000円扶養親族1名につき30,000円が控除されます。その際の控除方法は、 給与所得者については、令和6年6月以降の最初の給与等の源泉徴収税額から順次控除されます。また事業所得者については、令和6年分の所得税の第1期分予定納税額から本人の減額分を控除。同一生計配偶者等の分は確定申告か予定納税の減額申請により控除されます。
住民税については、令和6年度分の住民税の所得割の納税義務者で令和5年の所得金額が1,805万円以下の方は、本人1万円、控除対象配偶者1万円、扶養親族1名につき1万円が控除されます。その際の控除方法は、令和6年6月分は特別徴収されず、令和6年分の住民税所得割額合計から減税額を差し引き、残額を11等分した金額を令和6年7月から令和7年5月までの11ケ月で特別徴収されます。
いくつかの注意事項を確認しましょう。
給与計算担当者の方は、同一生計配偶者等の確認が必要になります。この場合、定額減税における「同一生計配偶者」は、合計所得金額が48万円以下(給与の収入ベースでは103万円以下)の方であり、これを超える収入がある方は対象外となります。また「扶養親族」は「扶養控除申告書」に記載された人で「住民税に関する事項」に記載された16歳未満の扶養親族も含まれます。
プロスペル・メリメは(1803年9月生まれ~1870年9月没)フランスの作家、歴史家、考古学者、そして官吏である。
メリメは、パリのブルジョアの家に生まれ、法律を学んだ後、官吏となり、1834年、フランスの歴史記念物の監督官として、多くの歴史的建造物の保護にあたった。また、ナポレオン3世の側近でもあり、上院議員としても活躍している。
メリメは、1829年から30年にかけて天才的短編作家として文壇に登場している。この時代彼は、8編の短編を発表しているが、その後のメリメは決して多くを書いていない。
彼の代表作は「カルメン」であるが、これは、歴史記念監督官として、また歴史家として旅行の余暇に書かれたもである。
彼の創作活動40年間のうち、短編はわずかに19編しかなく、うち8編は27,28歳の時の作品である。また、晩年には、ロシア文学の研究にふけり、プーシキンやゴーゴリを初めてフランスに紹介している。
この短編集は、彼の創作意欲の旺盛だった時期に書かれたというばかりでなく、後の作品に少しも劣らね完成した作品となっている。、
それにしても、この短編集「エトルリヤの壺」が初めて岩波文庫にでたのは、昭和3年の夏でる。それから、90年以上、現代に読み継がれていることに驚くばかりである。しかもその文章は、古臭くなく訳者をして、「水を飲むごとき快感を与える」と言わしめている。一読に値する短編集であろう。
井沢元彦は、1954年(昭和29年)名古屋市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、TBSへ入社。報道局記者時代に「猿丸幻視行」で第26回江戸川乱歩賞を受賞している。以後作家に専念し現在に至っている。
小説家としては、推理小説、ことに歴史上の謎を題材に取りつつ殺人をからめた作風で多くの作品を発表している。
特に、1992年から「週刊ポスト」に連載されている「逆説の日本史」では、日本の歴史を創ったのは「言霊、和、怨霊、穢れ」への無意識の信仰に基ずく非論理的な日本人の行動であると分析し、資料絶対主義を排し「その書かれなかった背景を考察すべきこと」「時代で常識とされたことは記録されなかったこと」及び通史的考察の重要性を強調している。
この「お金の日本史」でも井沢の考え方が色濃く反映され、史実にはでてこない大胆な考え方を繰り広げている。読み物としては、大変面白く、事実としての歴史書というよりも小説としての歴史書として読むべきなのかもしれない。
この本において井沢は、単なる貨幣の歴史を述べるだけではなく、その背後にある政治思想を大胆に仮説する。
たとえば、日本最初の貨幣「和同開珎」は、脱中国をめざす日本の独立宣言的な貨幣だったと解釈したり、徳川家康は、実は開国論者だったとか、渋沢栄一を絶賛し、本来は、経済発展の障害となるはずの儒教を経済発展の基礎に据えるという奇跡を成し遂げた、と語っている。
ただし、彼に対する批判も多く、歴史家の呉座勇一氏は「井沢氏の主張には、問題が多い。学会ではすでに過去のものとなっている俗説の焼き直しか作家的創造力が旺盛すぎて学問的な批判に耐えない奇説が大半である」と批判している。
令和5年12月22日、令和6年度税制改正の大綱が閣議決定されました。その大綱において、令和6年分の所得税について定額減税による所得税の特別控除を実施することとされており、今後関係する税制改正法案が成立した場合、令和6年6月から定額減税が実施されることになりす。
所得税額の特別控除を受けることができる方は、令和6年分所得税の納税者である居住者で、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下である方、(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下である方)です。
特別控除額は、次の金額の合計額です。①本人(居住者に限る)30,000円、②同一生計配偶者または扶養親族一人につき30,000円。
実施方法は以下の通りです。
給与所得者の場合は、令和6年6月1日以降、最初に支払われる給与等(賞与を含むものとし「給与所得者の扶養控除等申告書を提出している勤務先から支払われる給与等に限る、)につき源泉徴収をされるべき所得税及び復興所得税の額から順次控除されます。
公的年金受給者の場合は6月1日以後、最初に支払われる公的年金等につき源泉徴収をされるべき所得税額の額から特別控除に相当する金額が控除されます。
事業所得者の場合は、原則として令和6年分の所得税の確定申告の際に、所得税の額から特別控除の額が控除されます。また、予定納税の対象となっている方は、令和6年7月の第一期分予定納税額から本人分に係る特別控除の額が控除されます。
本年1月より、改正電子帳簿保存法がスタートした。
電子帳簿保存法(以下電帳法))とは、帳簿や書類などを、決められたルールに従って、電子データで保存することを規定した法律である。この電帳法は、2022年1月に施行されたのだが、多くの企業で準備が整わないなどの理由で2年間の猶予期間が設けられていたのである。
この電帳法で重要なのは、電子メールやクラウドサービスなどを経由してやりとりした「電子取引データ」は、従来のように紙での保存だけでは認められなくなり、電子データでの保存を義務づけられたことである。
たとえば、アマゾンなどのECサイドで購入した際の領収書をはじめ電子メールに添付された請求書などがその対象となる。ここでの注意点は、あくまで原本を保存しなければならないことで、取引後のデータに変更を加えることは禁止されている。
では、この電子データは、どこに保存すればよいのだろうか。実は、その保管場所については、特にルールが決まっているわけではない。要するに、税務調査の際、必要な電子データをすぐ提示できるようにしておくことを求めているのである。
それができれば、その保存場所はデスクトップ、クラウドサービス、ハードディスク、USBメモリーなど、どこに保存しても問題ないことになる。また、トラブルに備えて、バックアップを取っておくことも必要だろう。
保存期間については、インボイスでは、7年間の保存義務があるが、この電子データも7年間の保存義務が課せられている。また、23年度の税制改正において、一部制度の改正が行われ、前々期の売上が5000万円以下の場合、保存の際の電子データの検索要件が不要となっている。
インボイスのみならず、電帳法についての運用についても確認しておきたい。
G.F.ビゴーは、1860年(万延元年)パリで生まれている。明治11年、ビゴーが18歳の時、パリ万国博覧会の日本館展示で数々の日本美術品を見て日本へのあこがれを持つようになった。そして、明治15年、ビゴーが21歳の時、待望の来日を果たしている。浮世絵の世界に憧れ、日本美術の神髄をじかに学びたいと決意してやってきたのである。
ビゴーは、明治32年39歳の時、帰国の途についている。18年もの間、日本に滞在し、数々のスケッチを残したのである。
官吏や軍人などのエリートたち、洋装と和装がごっちゃになった商人たち、そして近代化や文明開化とは縁のない芸者や女中たち。ビゴーは、フランス社会では、想像もしなかった街並みや、人間たちに大いに興味をそそられたようである。西洋文明が怒涛のごとく入り込んできた日本において、人々は、巧みにそれを吸収しながらたくましく生きていく、そんな民衆に愛着を持ち、18年もの間スケッチを描き続けたのである。
本書「日本素描集」は、彼の代表的作品である「日本人生活のユーモア」全5冊のなかの傑作を選び紹介している。一つ一つのスケッチが、表情豊かで、その時代を語っている。
昭和2年10月、ビゴーは、パリ郊外の自宅の日本庭園で心臓発作を起こし世を去っている。