2021/12/17     本当は怖い税務調査

東京地裁は、令和3年12月10日、「鬼滅の刃」制作会社ユーフォーテーブル(有)(東京)社長近藤光被告に対し、法人税法違反などの罪として、懲役1年8ケ月執行猶予3年を言い渡している。裁判官は「……2012年以降は大幅な黒字が続いていたのに、売り上げ除外を繰り返した。経営者として強い非難を免れない」指摘している。(日経新聞12月11日)

上記会社は、東京国税局査察部の強制調査を受け、その際、金庫から3憶円が見つかったとされている。

税務調査には、任意で行われる「任意調査」と強制的に行われる「強制調査」の2種類があります。

税務署の行う「任意調査」の場合、申告漏れ等を発見し、適切な税金を支払わらせることを目的として行われるものです。一般的には、任意調査が圧倒的に多いため、税務調査という場合には、こちらを指します。ただし、任意とされてはいるものの、国税通則法127条により、税務調査を拒否したり、虚偽の答弁をした場合「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科せられます。

一方、国税庁査察部(いわゆるマルサ)の行う「強制捜査」は国税局の調査員が直接会社や自宅、取引先にやってきて強制的に捜査が行われます。

強制捜査のなかで脱税が発覚した場合、逮捕、起訴される可能性が高いといえます。

脱税の罰則は、基本的には、10年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金刑あるいはその併科(両方科せられる)です。

脱税の罰則は重く、社会的な制裁も大きく受けます。また精神的ショックも大きいはずです。やはり、適正な納税を心掛けるべきでしょう。

2021/12/8      ビジネス関連書を読む 第4回 現代語訳「論語と算盤」 渋沢栄一著 ちくま新書

渋沢栄一は、天保11年(1840年)武蔵国(現在の埼玉県深谷市)生まれ。実家は農業や養蚕、藍玉の製造を手掛ける豪農であった。

紆余曲折の後、渋沢は、大蔵省にはいり、全国測量、度量衡の改正,租税制度の改正、貨幣制度改革、藩札の処理、立会略測の設定と多岐にわたる仕事をこなしている。

しかし、新しい国造りのための出費の増大をやむなし、とする大久保利通と財政規律を欠いた支出に難色を示す渋沢は、性格的にソリが合わないこともあり、しだいに対立していく。その後、彼は大蔵省を辞め、実業界へと進出していった。

渋沢は、1875年第一国立銀行の頭取となって、以後の活躍の基礎を築いている。そして、この第一国立銀行を足掛かりに、日本の未来に必要な企業を順次設立していった。

彼のかかわった会社は東京海上火災保険、日本郵船、帝国ホテル、札幌麦酒会社(のちのサッポロビール)など480社。さらに東京商工会議所、東京株式取引所(東京証券取引所)設立にも中心的な役割を果たし、まさしく日本実業界の父と呼ばれるにふさわしい活躍だったのである。

もともと、資本主義は、利益を増やしたいという欲望をエンジンとして前にすすんでいく面がある。そしてそのエンジンは、しばしば暴走する。渋沢は、その暴走に歯止めをかける手段として、論語の必要性をこの本で説いている。

この「論語と算盤」は渋沢の講演の口述筆記されたものが編集されたもので、初版は、大正5年である。

渋沢は、1931年(昭和6年)91歳で没している。

2021/11/17       相続した不動産が負動産になる? 

週刊東洋経済10/16日号に空き家、空き地特集が掲載されている。

総務省「住宅・土地統計調査」によれば、2018年実績の空き家数は、849万戸。30年前、1988年は、394万戸だったので、倍以上に増えたことになる。空き家数を総住宅数で割った空き家率は、13.6%で、今や7戸に1戸は空き家ということになる。

所有者不明土地は、410万㌶に達し、すでに九州全体の面積368万㌶よりも広いことになる。また、推定では、2040年には、約720万㌶へと増加し、北海道の面積まで近づくことになるらしい。

実際に、所有者不明土地が発生する原因としては、約67%が相続登記の未了であることが判明している、つまり、所有者不明土地と空き家の問題は、相続を起因としているケースが多いのである。

法律の施行は先になるが、空き家や空き地問題を抑制するための抜本的対策として、相続を知った時から3年以内の登記の義務化、遺産分割の期間限定、土地所有権の国庫帰属の設定など、所有者不明土地の増加を抑制する関連法が2021年4月に成立している。

また、税制的には、相続人が相続により生じた古い空き住宅または当該空き住宅の除却後の敷地を一定期間内に譲渡した場合、譲渡所得から3000万円を控除できる特例が2016年に導入されている。

いずれにしても、相続により取得した古い不動産は、負?動産となりやすい。相続後は、その利用の仕方、また売却等を早めに検討すべきであろう。


2021/11/13    「古代への情熱」 岩波文庫を読む 第3回 シュリーマン 著 村田数之亮訳 

シュリーマンは、1822年、現在のドイツに生まれている。

この「古代への情熱」は、紀元前3000年頃からの古代エーゲ海文明である、トロヤ文明、ミケネ文明、という、それまで神話の世界の物語だとされてきた2代文明の、シュリーマンによる発見史であるとともに、さまざまな困難を乗り越え、夢を実現させたひとりの人間の人物史であるともいえよう。

彼は、8歳の時、父より「子供のための世界歴史」を見せられ、そこに描かれた古代トロヤの世界を過去に実在した文明だと信じた。父は、「これは、ただのつくり話だよ」と答えるが、シュリーマンは、将来トロヤを発掘することを決意する。

その後、彼は、数々の事業に成功をおさめ、巨万の富を築いている。

そして、1871年、彼が49歳の時、正式な許可を得てトロヤの発掘に着手している。その後、何回かの発掘により、貴重で大変高価な財宝類を発掘している。まさしく、彼は、子供の頃からの夢を、努力と執念で実現したのだ。

一方で、彼は、語学の天才でもあり、15ケ国後を自在に操ったといわれている。著書のなかで、彼の独特の語学勉強法が語られている。

また、彼は、1864年、事業を清算した後、世界旅行に出かけ、その旅の途中、幕末の日本を訪れ、横浜に滞在している。

まさしく、彼の不屈の闘志が、古代エーゲ海文明の存在を証明したのだ。


2021/10/27      ふるさと納税心得   

ふるさと納税とは、寄付金の一種で、日本の税制における寄付金控除を活用した制度です。過疎により税収が減少している地域と都市部との地域間格差を是正することを目的として作られたものです。総務省の発表によると、2021年度に納める住民税からふるさと納税の控除を受ける人は、約550万人と過去最高となっています。

この制度では、一定の寄付上限額までは、自己負担額2000円を除く金額が所得税と住民税から控除され、寄付額の3割程度の返礼品がもらえるというものです。

では、自己負担が2000円となるような寄付の上限額を計算するとどうなるのでしょう。夫婦二人の場合、(配偶者に収入なし)給与の年収500万円で50,000円程度、年収700万円で85,000円程度。年収1000万円で165,000円程度の寄付が上限ということになります。

手続き的には、寄付した翌年3月15日までに、寄付した各自治体の寄付金受領証明書(21年分の寄付分からは一定のサイトが発行する「寄付金控除に関する証明書」が使用可)を添付した確定申告を提出する必要があります。

また、確定申告不要の会社員が、5ケ所までの自治体に寄付する場合「ワンストップ特例制度」が利用でき、自己負担2000円を除く寄付に相当する金額の住民税が翌年度に減額される制度もできています。

ふるさと納税については、富裕層優遇であるとか、都市部の住民税の流失が大きすぎる、などの批判もありますが、過疎化が進む地方にとっては、貴重な財源であり、寄付の慣習が少ない日本では、この制度を上手に利用して地域の活性化に繋げるべきでしょう。


2021/10/22  ビジネス関連書を読む 第3回 「タックス ヘイブン」 志賀 櫻著  岩波新書 


タックスヘイブン(Tax haven)とは、一定の課税が著しく軽減、ないしは完全に免除される国や地域のことであり、租税回避地などと呼ばれている。代表的な地域としては、スイス、香港、バハマ、ケイマン諸島、バージン諸島、ルクセンブルク、などがある。

これらの地域では、納税情報の提供を、企業、個人情報の保護などを理由に拒否し、他国が干渉できないため、富裕層の資金が集まっているのである。

また、現代の国際金融取引においては、租税負担の軽減を目的として、多くの資金がタックスヘイブンを経由して動いている。このタックスヘイブンが検証も実証も不可能なため、タックスヘイブンに実体のない子会社を設け、そこに利益を移して税負担の軽減を図っている企業は少なくないのである。

また、一部のタックスヘイブンには、本国からの取り締まりが困難なことに目をつけた悪質な利用の対象(例えば、麻薬や、テロ組織、暴力団の資金)となっているともいわれている。

著者の志賀氏は「タックスヘイブンの真の問題は、タックヘイブンの存在そのものであるだけでなく、そのタックスヘイブンを舞台に行われている悪事、そしてこの悪事によって不必要な金融危機が繰り返し引き起こされていることである。」と指摘している。

ただし、2021年10月20日の日経新聞によれば、多国籍企業の課税逃れに歯止めをかける新しい国際課税ルールについて、日本を含む136ケ国が世界共通「法人税率最低15%」に合意したことを伝えている。この合意により、今後のタックヘイブンのあり方が変わる可能性が指摘されている。



2021/09/24   日本の平均賃金はこの20年間増加していない! 

日本経済新聞の記事によると、経済協力開発機構(OECD)のデータでは、過去20年間で米国の名目平均年収は約8割、ドイツやフランスは約5割増えたが、日本は逆に5%減少した。日本は、バブル崩壊後も雇用維持を優先する一方、賃下げなどで人件費を圧縮、物価も賃金も上向かないとの将来予測が定着し、企業と家計の心理が委縮した。(日本経済新聞2021年9月9日)と記している。


さらに、週刊ダイヤモンドの記事によると、OECD加盟国の平均賃金(年間)を高い順に並べてみると、日本は22番目で、金額は約422万円だった。トップの米国は約763万円で、率にして44%の大差がついている。
OECD35か国の平均額約540万円に対しても22%低くなっていることになる。また、2015年の時点で、日本の平均賃金は、韓国にも逆転されている。(週刊ダイヤモンド8/28号)


エコノミストの河野龍太郎氏は、その原因として、雇用の二極化、つまり、正規、非正規雇用の二重構造を挙げている。
業績の改善を、生産性を上げる投資よりも、非正規の安いコストで対応しようとした、というのである。


結局、求められているのは、企業それぞれが持つ付加価値に正当な評価がなされ、製品価値(サービス価値)に転換される。そして、商品価格(サービス価格)が上昇する。その結果、それが賃金上昇に結び付く、という循環にシフトすることが求められているのだろう。


2021/09/17 岩波文庫を読む 第2回 「代表的日本人」 内村鑑三著 

内村鑑三は、1861年(万延2年)生まれ、日本のキリスト教思想家、聖書学者、伝道者である。
この「代表的日本人」は、日本が欧米列強に肩を並べようと近代化に邁進していた明治時代、
日本の精神性の深さ、高潔さ、を世界に知らしめようと英語で出版された作品である。


内村が取り上げた人物は、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5人である。
内村は、この作品を通して、西洋のキリスト教信徒に対し、優るとも劣らぬ日本人がいたことを世界に紹介しようとしている。
内村がここで取り上げた人物の描き方は、その歴史的な歩みを忠実に描写するというよりも、内村の理解した、高潔で、宗教的な人物象として、それぞれを描いている、と言えるだろう。
内村は、「わが国民の持つ多くの美点に、私は目を閉ざしていることはできません。日本が、今もなお、わが祈り、わが望み、わが力を惜しみなく注ぐ、唯一の国土であることには変わりはありません。」と記している。
最初の執筆時である、日清戦争中の時代状況が反映し、色濃いナショナリズムも散見される作品ともなっている。
ある意味で、近代の西洋文明を安易に受容した明治時代の日本に対する批判といえるのかもしれない。


この作品は、新渡戸稲造「武士道」岡倉覚三「茶の本」と並んで三大日本人論と評されている。

  


 

2021/09/11  ビジネス関連書を読む 第2回 「人を動かす」 D・カーネギー著 創元社 

あらゆる自己啓発本の原点とも言うべき本書は、1937年に初版が発行されると、瞬く間に
ベストセラーとなり、世界の累計で1,500万部を売り上げたといわれている。日本国内でも、
430万部を売り上げ、現在も売れ続けている超ロングセラーである。


「人を動かす」は、人が生きていく上で、身につけておくべき人間関係の原則を、わかりやすくまとめている。
著者は言う「およそ人を扱う場合には、相手を論理の動物と思ってはならない。相手は感情の動物であり、しかも偏見に満ち、自尊心と虚栄心によって行動するということをよく心得ておかねばならない」と。
そのうえで、人を変える必要が生じた場合、次の事項を考えるように勧めている。①誠実であれ。守れない約束はするな、自分の利益は忘れ、相手の利益だけを考えよ。②相手に期待する協力は何か、明確に把握せよ③相手の身になれ。相手の真の望みは何か。④あなたに協力すれば相手にどんな利益があるか。⑤望みどおりの利益を相手に与えよ。⑥人にものを頼む場合、その頼みが相手の利益にもなると気づくように話せ。


しかし、これらの勧めは、約2000年前に書かれた聖書の言葉「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」(ルカの福音書10章27節)と合致している。
結局、人間関係の原則は、時代を経ても変わらない、と言えるのではないだろうか。




 

 

   
    

2021/09/10 五輪報奨金と課税関係

 東京オリンピックは、8月8日、パラリンピックは、9月5日に閉幕しました。


オリンピックメダリストに対して、日本オリンピック委員会(JOC)からは報奨金が支払われることになっています。
その金額は、金は500万円、銀は200万円、銅は100万円です。また、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)からもパラリンピックメダリストに対して、金は300万円、銀は200万円、銅は100万円が支払われますが、これらの報奨金は、所得税法上、全額非課税ということになっています。


また、JOC、JPSAに加盟している各競技団体から支払われる報奨金についても、今回の東京オリンピック、パラリンピックから、金500万円、銀200万円、銅100万円までの報奨金については、非課税とされることになりました。
ただし、一般企業から支給される報奨金については、課税対象となります。
ちなみに、ゴルフや、テニスはスポンサー企業からの報奨金が手厚く、錦織圭選手が、リオ五輪で銅メダルを取った際には、日清食品、ユニクロなどのスポンサー企業から、合計8憶円相当が贈られたといわれています。


また、今回のパラリンピックで金メダルを取った国枝慎吾選手に対し、ユニクロが1憶円の報奨金を贈るそうですが、(残念ながら)これらの金額も課税対象ということになります。




 

 

   
    

2021/08/17  岩波文庫を読む 第1回 「説きふせられて」 ジェーン・オースティン著

 ジェーン・オースティンは、1775年、イングランド南岸部ハンプシャーのスティーブントン
に生まれている。彼女は、41歳で亡くなるまで、生涯6編の長編小説を書いている。最も有名な作品は、1813年に出版された「高慢と偏見」であるが、「説きふせられて」(Persuasion)は、1818年、彼女の最後の長編小説として出版されたものである。


ジェーン・オースティンの作品は、いずれも、18~19世紀のイングランドにおける田舎の中流社会を舞台としており、結婚を中心とした家庭生活を、女性の視点から生き生きと描き出している。
「説きふせられて」の中で彼女はこう言っている。「わたしたち女は、愛する人がこの世にいなくなっても、希望がなくなっても,いつまでもいつまでも愛していけるということなのです。」
 サマーセットモームは「世界の十大小説」のなかでジェーン・オースティンを取り上げ、彼女の作品について、「その作品は……平凡な事柄、日常生活に普通の複雑な事柄、感情、人物を取り扱っていて、どの作品にもこれといって大した事件は起こらない。それでいて、あるページを読み終えると、さて次に何が起こるのだろうかと急いでページを繰らずにはいられない……小説家で、これだけのことを読者にさせる力を持っている者は、小説家として持ちえるもっとも貴重な才能の持ち主なのである。」と評している。


彼女の時代、穏やかな日常のなかに起こっていたささやかな出来事は、現代でも日常に起こっている。それゆえ、現代の読者も、作品の中の出来事を等身大の出来事として捉え、そして彼女の感性を支持しているのだろう。



 

 

   
    

2021/08/15  ビジネス関連書を読む 第1回 「嫌われる勇気」岸見一郎、古賀史健著 ダイヤモンド社

 本書は、アルフレッドアドラー(1870年~1937年、オーストリアの精神科医、心理学者)の思想を、青年と哲人の5回の夜の対話という形式を通してまとめた1冊である。

第1夜、トラウマを否定せよ、トラウマは存在しない。
第2夜、すべての悩みは「対人関係の悩み」である。
第3夜、「あの人」の期待を満たすために生きてはいけない。
第4夜、自分には価値があると思えるために。
第5夜、人はいま、この瞬間から幸せになることができる。

哲人は言う「他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを恐れず、承認されないかもしれないというコストを支払わない限り、自分の生き方を貫くことはできない。つまり、自由になれないのです。」

さらに哲人は言う「わたしのことを嫌うかどうか、は他者の課題です。わたしのことをよく思わない人がいたとしても、そこに介入することはできません。……その勇気(嫌われる勇気)持ちえたとき、あなたの対人関係は一気に軽いものへと変わるでしょう。」

本書は、「どうすれば人は幸せに生きることができるのか」、という哲学的な問いに対し、
さまざまな対話を通して、具体的な回答を示している。


 

 

   
    

2021/08/05  贈与税が改正される!?

2021年度税制改正大綱によると、「相続税と贈与税をより一体的にとらえて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」としている。


現在、贈与税には暦年課税と相続時精算課税があり、どちらかを選択しなければならない。暦年課税は、名前の通り1年単位で課税するもので、年間110万円までの贈与は、非課税となっている。相続時精算課税は、贈与したときは、2,500万円までは非課税だが、相続時にその非課税分まで含めて精算され、相続財産として課税される。
 今回の改正の方向性は、この暦年課税の改正に焦点が当てられていると思われる。この非課税枠110万円を上手く利用して、何年にもわたり、多くの近親者等に贈与することで、かなりの節税が可能だからだ。


 現在、暦年課税は、相続時発生3年以内の贈与は、相続財産に組み込むことになっているが、これが、10年ないし15年以内となる可能性がある。あるいは、暦年課税が廃止され、相続時精算課税に一本化されるかもしれない。いずれにしても、令和3年以降、相続における贈与を使っての節税策の見直しが求められるだろう。

 

   
    

2021/07/17  PCR検査と医療費控除

  原則として年間10万円以上の医療費の支払いについては、医療費控除の対象となりますが、昨今、ニュースでよく取り上げられるPCR検査についての取り扱いは、どうなるのでしょう。この場合、自主的な判断によりPCR検査を受けたとき、その支払い額は、医療費控除の対象とはなりません。ただし、検査の結果、「陽性」となり、引きつづき治療を受けた場合は、その検査費用は医療費控除の対象となります。
 今回の新型コロナウイルスの検査に限らず、「予防」にかかった費用は、医療費控除の対象にはならないのです。ただし、検査によって病気が見つかれば、その検査は、治療に先立って行われた診療とみなされ、医療費控除の対象となります。
また、企業が、全社的にPCR検査を行い、その検査が、社員全員が対象であれば、福利厚生費として処理できますが、経営者のみである場合などは、役員賞与の扱いとなり、損金にもならないことになります。
   
    

2021/07/16 DX(デジタルトランスフォーメーション)って何?

こ最近、よく新聞等で見かけるDXとは、いったい何なのでしょう。

経済産業省は、2018年9月「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」という報告書を公表しました。この報告書によれば、現状、多くの企業において、既存のITシステムの老朽化、ブラックボックス化が起きていると指摘しています。そして、このような老朽化が、新しい事業展開に対応できない、また、保守運用のためのコストがかさむという問題を生じさせ、DXの推進を阻んでいるというのです。さらに。この問題が解決されない場合、2025年以降、日本経済に年間で最大12兆円の損失が生じる可能性を指摘しています。これが、いわゆる「2025年の崖」です。また、2018年12月に公表された「DX推進ガイドライン」によれば、今後、日本企業が目指す姿としてデータとデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、同時に業務そのものや組織、企業文化またその風土までも変革する必要性を訴えています。そして、このことが実現すれば国際競争上優位性を確立して、年間130兆円のGDPを押し上げることが期待できると報告しています。 どうやら、社会は一気にデジタル化へと向かっていくようです。
      

2021/06/19 大法人が“中小法人成り”? 

2021年2月23日付けの日経新聞によれば、旅行代理店大手のJTBが、これまでの資本金23億4百万を1億円に減資することを報じていました。最近、中小法人に鞍替えする大法人が目につきます。毎日新聞社も41億5千万の資本金を1憶円へ、芸能プロダクションの吉本興業は125憶円から1憶円へ減資しています。

法人税法には、各事業年度の終了の時において資本金の額が1億円以下であるものを中小法人と定めているのですが、その中小法人には、税法上数々の優遇措置が与えられています。①一定の所得までの軽減税率の適用②欠損金全額の繰越控除③交際費の損金不算入制度の特例④法人事業税の外形標準課税の免除などです。

我が国約382万社のうち99.7%を占める中小法人。多くの企業は中小法人に該当していますが、意外とその数々の恩恵は、知られていないのかもしれません。

2021/06/18 約束手形がなくなる!

2021年2月、経済産業省の検討会は、約束手形の廃止を打ち出しました。

まずその移行段階として電子的決裁手段への切り替えを順次行い、2026年をめどに紙から電子へ全面的に移行し、将来的には約束手形制度を廃止する、というものです。

 支払手形の発行残高は、1990年度の約107兆円をピークに減少傾向が続き、最近では約25兆円程度となっています。

手形取引の問題点として、第一に現金取引に比べ支払い期日までの期間が長いことです。現金ですと翌月か翌々月には入金になるのが、手形ですと90日から120日後(あるいは180日後)の支払いとなります。第二に印紙代や郵送費などの(余分な?)コストが発生することです。第三に管理コストがかかることです。約束手形は紙なので手形の保管、管理、適切な運用が求められます。紛失の可能性も考えられますからね。

これまでの商慣習上、手形発行により支払いを行っていた企業は、早い機会に手形から銀行振り込み、また電子記録債権へ移行することをお勧めします。