2026年 3/25   大相続時代の到来

国税庁のデータを基に全国で1年間に亡くなった人のうち相続税が生じた人の割合をはじくと、データのある2023年度で9.9%と10人に1人程度となっている。必ずしも人が亡くなった時に誰もが払う税金ではないものの、2013年度の4.3%からみると倍増している。

日本総合研究所の試算では、1年間で国内で相続される資産は、46兆円程度となっている。高齢化により死亡者数が増加するため、この金額は、2030年に48.8兆円、2040年には51.0兆円に増加すると見込まれている。

少子高齢化が進むなかで、亡くなる人は増えていく一方、亡くなった人の財産を受け継ぐ子供の数は減少している。従って、今後も相続税収は増加が見込まれ、1人当たりの相続財産が増加することで税負担の裾野も広がる事になる。

一方、受け継がれる財産の中身は変わってきている。バブル崩壊直後の1993年は、土地が7割で、金融資産は2割に満たなかった。その後は、金融資産の存在感が高まり、2023年には、現預金と有価証券を合わせて、およそ11.9兆円と全体の5割を超えている。

経済全体でみると相続税は、不平等を解消するツールと言えるだろう。資産が一部の人たちに偏り、世代を越えて格差が受け継がれるリスクがあるからだ。相続税はその格差の解消に役立つことになる。

日本の相続税は、世界的にみて低いわけではない。財務省によれば、米国は課税価格(財産)が約43憶円を越えるまで相続税の負担はない。しかし、少子高齢化が進み、社会保障への支出が避けられない日本の場合、税収確保と格差是正を実現する上で、相続税は、必要な税と言えるのではないだろうか。

2026年 3/22  岩波文庫を読む第29回 「青銅の基督」長与善郎著 

長与善郎は、明治21年、(昭和36年没)東京都に生まれる。東京帝国大学文学部英文学科を中退。日本の小説家、劇作家、評論家である。白樺派の中心的存在であり、人道的作風で活躍した。今回紹介する「青銅の基督」は彼の代表作と言われている。

徳川幕府によるキリシタン弾圧が激しさを増す中、長崎に住む南蛮鋳物師の萩原裕佐は、キリシタンの娘モニカに恋心を抱きます。結婚を願望した裕佐でしたが、彼がキリシタンでないため、モニカの親から許しをもらえませんでした。

一方キリシタンでありながら、拷問に堪え切れず、幕府に協力することとなった南蛮バテレンのフェレラは、「踏み絵」として青銅の基督像を用いることを幕府に進言します。

「踏み絵」とは知らず、幕府から制作の依頼を受けた裕佐は、モニカへの愛を胸に、見事な基督像を作り上げます。

その後、多くのキリシタンが捕らえられ、処刑の日を迎えます。信徒たちは、裕佐が作った見事な基督像の前で礼拝し、処刑されていきました。一方、裕佐は、自分はキリシタンではないと言い張りますが、聞き入れられず刺殺されるのです。

実際、歳に似合わず英明ぶりを発揮して、「名君」と言われた三代将軍家光でしたが、一方では、無抵抗なキリシタンに対して、どこまでも厳格に弾圧します。つまり、「恐ろしさ」を諸侯に示すという意味で、キリシタンを弾圧することは、彼の威厳を示す好材料だったのである。

2026年 2/4 日経新聞の記事から

2026年1月15日「春秋」に興味深い記事が掲載されていたので紹介しよう。

「72の法則」は資産運用を考えるときのちょっとした知恵だ。この数字を運用利回りで割ると、元本が2倍に増えるおおよその年数が簡単にわかって便利である。年に2%の利回りで運用できれば、36年で元本は2倍(72÷2)になり、3%なら24年で2倍になる。
雪だるま式でお金が増える福利運用の威力を示し従来、胸躍る文脈で語られてきた。最近はそうでもない。
モノの値段も同じ理屈で上がるので、インフレで物価が2倍になる年数の伸びが切実なのだ。お金の価値の目減りの目安でもあり、今の1万円は、3%のインフレが続くと24年で価値が半分の5000円相当になる。
「高市トレード」が再燃し、債券安(国債の金利上昇)円安、株高がすすんだ。3市場が共通して暗示するのはインフレの進行だ。満期に戻る元本価値が目減りするとみる投資家が高い金利を求め、また、購買力が下がりそうな通貨を売る。株価の上昇も企業収益のインフレ連動性を映す面がある。
72の法則ほど単純ではないが、財政のインフレ税も性質は同じだ、国民の預貯金の価値が目減りするほど政府の債務負担は軽くなる。
今は、そんな様相だから、政権基盤の強化に市場もインフレを読み取るのだろう。実際のところ首相は、どんな考えなのか。責任ある積極財政とは何か。この際、詳しく知りたい選挙だ。

 2026年 2/3 ビジネス関連書を読む 第29回 「道をひらく」松下幸之助著

昭和43年に発売以来、現在まで読まれ続けているベストセラー本である。

松下幸之助は、まえがきのなかで、「本書は、PHO研究所の機関誌「PHP」の裏表紙にこれまで連載してきた短文の中から、百二十一編をまとめたものである」と記している。
「運命を切り開くために」「日々を新鮮な心で迎えるために」「ともによりよく生きるために」「みずから決断を下すときに」「困難にぶつかったときに」「仕事をより向上させるために」「事業をよりよくのばすために」「自主独立の信念をもつために」「生きがいある人生のために」「国の道を開くために」をテーマに珠玉の短文がちりばめられている。

たとえば「人生とは、一日一日が、いわば死への旅路であるといえよう。生あるものがいつかは死に至るというのが自然の理法である限り、ものみなすべて、この旅路に変更はない。

ただ人間だけは、これが自然の理法であることを知って、この旅路に対処することができる。いつ死にいたるかわからないにしても生命のある間に、これだけのことやっておきたいなどと、いろいろに思いをめぐらすのである。……死を恐れるのは人間の本能である。だが死を恐れるよりも、死の準備のないことをおそれたほうがいい。ひとはいつも死に直面している。それだけに生は尊い。そしてそれだけに、与えられている生命を最大にいかさなければならないのでる。それを考えるのがすなわち死の準備である。そしてそれが生の準備となるのである。」など、生きていくうえで、励まされる言葉で満ちている。一度ならず、折にふれ読み返したらどうだろうか。

2026年  1/5   確定申告が必要な方の確認  

確定申告とは、納付税額の確定手続きであると同時に、すでに納付している源泉徴収税額や予定納税額を精算するための手続きです。税務署の確定申告の相談及び申告書の受付は、令和8年2月16日(月)から令和8年3月16日(月)までです。ただし、還付申告については2月13日(金)以前でも申告書を提出することができます。以下の方は確定申告が必要です。

⑴給与所得がある方の場合 

 ①給与の収入金額が2,000万円を超える方

 ②給与を1ケ所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える方

 ③給与を2ケ所以上から受けていて(全部が源泉徴収の対象)年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額の合計が20万円を超える場合。

 ④同族会社の役員やその親族などで、その同族会社から給与のほかに貸付金の利子、店舗、工場などの賃貸料などの支払いを受けた方。

 ⑤在日の外国公館に勤務する方や、家事使用人などで給与の支払いを受ける際に所得税及び復興特別所得税の源泉徴収をされないこととなっている方。

⑵公的年金のある方の場合 ~公的年金に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと、残高がある方。

⑶退職所得がある方の場合 ~外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある方

2026年  1/4  岩波文庫を読む 第28回 「盲目物語、春琴抄」谷崎潤一郎著 

谷崎潤一郎は、明治19年7月、現東京都中央区日本橋人形町に生まれる。(昭和40年7月没)谷崎は明治末期から昭和初期まで、戦中戦後の一時期を除き旺盛な執筆活動を続け、国内外でその作品の芸術性について高い評価を得ていた。また、谷崎は、ノーベル文学賞候補に何度も挙げられている。

谷崎は、「刺青」「痴人の愛」「細雪」「鍵」「盲目物語」「春琴抄」など多くの作品を残している。また映像化された作品も多く、今回取り上げた「盲目物語」は、1942年「お市の方」として上映され、「春琴抄」は、1935年、1954年、1976年、2008年に映画化されている。

では、作品を簡単に紹介しよう。

「盲目物語」は、戦国時代を扱った歴史小説であるが、「盲目」の主人公による一人語りの体をとった作品である。戦国の武将・浅井長政がその義兄にあたる織田信長との戦闘に踏み込んだ事情から始まり、戦国武将間の入り組んだ権力闘争のプロセスが「盲人」の語りを通して展開されている。また、戦国時代に絶世の美女とうたわれた、お市の方(信長の妹)。そのお市の方を巡り、その獲得に、秀吉はじめ多くの武将たちが戦ったことをまとめた小説でもある。

「春琴抄」は、大阪道修町の薬種商鵙屋の次女春琴は、9歳の頃に眼病により失明して音曲を学ぶようになる。春琴の身の回りを世話していた丁稚の佐助もまた三味線を学ぶようになり、春琴の弟子となった。春琴は、師匠の死を機に三味線奏者として独立した。その後、何者かが春琴の屋敷に侵入して、春琴の顔に熱湯を浴びせ大きな火傷を負わせた。ただれた顔を佐助に見られることを嫌がる春琴を思う佐助は、自ら両眼を針で突き、失明したうえで春琴に仕えるのである。映像化にふさわしい作品であろう。